N B N 通 信 51 号

名古屋点訳ネットワーク
2025年8月発行





―・― 目 次 ―・―

1. NBN総会のご報告

2. 「人と情報につながることからはじまる一歩へ
〜点字とともに 点字となかよし〜」
  講師: 京都ライトハウス鳥居寮   石川 佳子 先生





1.NBN総会のご報告

         

2025年7月6日(日)名古屋市総合社会福祉会館多目的活動室において、NBN総会が行われました。参加者は社会福祉協議会職員2名も含め、30名でした(うちzoom参加は8名です)。
まずボランティアセンターの野川様と内藤様から、ガイドヘルパー不足の現状や助成金申請についてお話しいただきました。 次に参加者の自己紹介の後、代表の中西さんが、1998年に始まったNBNの活動を説明しました。
NBNは点訳に関わる人と点字を読む人のために役立つ活動を目指したつながりです。最近では個々の点訳サークルのホームページがなくなるところもあり、データが埋もれてしまうのは大変もったいないので、ぜひNBNのデータベースに載せてほしいと訴えました。
続いて2024年度の活動報告、会計報告ならびに2025年度の活動計画について、中西さんが説明しました。下記をご参照ください。

(1) 2024年度活動報告

@ 6月30日(日)総会・講演会
「触地図を作り地図や模型を触る取り組み〜ボランティアとともに作る教材〜」
講師:新潟大学 工学部 渡辺哲也教授  

A 10月20日(日)「志段味古墳群ツアー」

B NBN点訳データベース(更新中)
点訳登録のタイトル数は2025年6月現在で、書籍2216、 記事3678、歌詞3812となっています。
点訳者のみなさんからは、ダウンロードされると連絡が来るのが嬉しいと好評をいただいています。

(2) 2024年度会計報告
承認されました。

(3)2025年度活動計画
参加したみなさんにご希望をお聞きしましたが、具体的な意見が出なかったため役員に一任されました。後日、役員会で「大須演芸場」へ行くことが提案され、検討中です。 詳細は決定次第お知らせいたします。

(4)2025年度予算
満場一致で承認されました。

(5)その他の参加された方からのご意見とそれに対する回答

  ・中島さんがHPの修正などを続けてくださっているが、外注すれば何十万円にもなるし、場合によって百万円をこえることもある。事務費としてお支払いしたらどうか。
 ⇒お金に余裕がある時は経費として少しだがお支払いしている。
  ・会費を払っていないことが心苦しいので寄付をしたい。
 ⇒現在は助成金で十分足りているので大丈夫。協力できるなら、データを活用したり掲示板などを利用して情報を載せてほしい。
  ・活動について、「清州あいち遺跡ミュージアム」という場所がある。
 ⇒調べてみる。
  ・最近新しいパソコンに買い替えたが、Tエディタの不具合がある。アドバイスはないか。
 ⇒点訳ソフトとパソコンに関しても情報共有していきたい。
(掲示板にヒントを書いています。)

(6)役員について
2年任期なので昨年度と変わりありません。(一緒に活動してくださる方を募集中です。)

代表    中西和子(大樹会)     
副代表   細川陽一(名古屋盲学校)
      花井敦子(はづき会)
会計    大倉裕子(みなづき会)
会計監査  中井慶子(点訳サークルてんてん)
広報    浅田浩子(点訳サークルてんてん)
      中井慶子(点訳サークルてんてん)
      竹本邦江(はづき会)
サポーター 牧原英治(半田市)
      石川亜紗美(半田市)
HP管理  中島正二(瀬戸市)
      平瀬徹(大樹会)

2. 「人と情報につながることからはじまる一歩へ
〜点字とともに 点字となかよし〜」

講師: 京都ライトハウス鳥居寮   石川 佳子 先生


石川先生は、京都ライトハウス鳥居寮で中途失明の方に点字指導をされています。先生は子どものときから弱視でしたが、情報がない時代ということもあり、ご本人曰く「根性で」普通校に通っていらっしゃいました。     
結婚後、中途失明となった石川先生ですが、突然届いた「点字講習会のお知らせ」という1枚のはがきで人生が変わりました。点字を使わなければいけないという状況は、その頃の先生にとってはショックだったそうですが、講習会に行き、点字を習い始め、期せずして白杖の歩行訓練も同時に受けられました。そうして石川先生は「普通のお母さんのようにわが子に絵本の読み聞かせをしたい」という強い思いで点字の習得に励まれました。
お子さんを授かった後、絵本の個人点訳者にも恵まれ、実際にお子さんに読み聞かせができるようになりましたが、意外にもお子さんは点字を読むお母さんに興味を持っていたことが、後になってわかったそうです。そしていつの間にか、お子さんは、お母さんには点字が必要だということを知るようになっていたそうです。
先生は点字を通して周りの人達と関わっていったことは宝物だとおっしゃいます。現在は鳥居寮という視覚リハビリテーション施設で毎年30人ほどの新しい生徒さんたちに点字を教えていらっしゃいます。生徒さんたちは開始時期も年齢もレベルもバラバラで、多い時には5〜8組の方たちに対して3つの部屋を移動しながら指導されているとのことです。ゴールはそれぞれなので、その方のニーズに合わせて指導されています。何より読んで楽しいもの、想像して確かめられるものなど、先生の楽しい工夫が満載のオリジナルテキストで、読める実感を大切に指導していらっしゃいます。
また、先生は点字から未来へ広げる2つのことを大切にしていらっしゃいます。一つは本人自身の中の可能性の広がり、もう一つは周りの人との関わりの広がりです。その中の一つがサークル活動です。実際に先生が教えることができる時間は週に1、2回で45分が2コマ。生徒さんは、白杖歩行訓練やパソコン・アイフォンなどの勉強で忙しくて時間がないのが現実。ですから卒業した後の生徒さんのために先生は、誰かと一緒に勉強を継続できるためのマッチングをされています。お相手は点訳ボランティアであったり、点字利用者であったりするそうですが、そのようなサークル活動は、先生が運営するのではなく、本人たちが動いて自主的に運営してもらうことで、ますます点字習得に効果があがっているそうです。
点字習得にはエネルギーが要ります。1年間で何とか読めるようになる方が多いそうですが、中には点字は必要ないと思う方もいますし、できないと思う方もいます。しかしいろいろな方に教えて来られた先生は、自分で決めつけてしまうことは人生を狭めているとおっしゃいます。本人の思い込みや、支援者側の決めつけが問題になることもあるので、本人の可能性が生まれるには、決めつけや思い込みをはずしていくことが大切だということです。 「料理をするにも包丁がどこにあるか、触って覚えなければならない。いろいろなことを知るのには、触ってわかるための努力が必要ですが、点字はそうではありません。触るだけでわかります。見えなくても大丈夫。」そう言い切る先生の笑顔は明るいものでした。
先生が教えた生徒さんからのメッセージの一部です。
「読めないと言う悔しさが読みたいと言う気持ちを強くしました。体一つで読み書きが成立することに意味があります。自分の使用文字であると言う意識が生まれます。点字のおかげで誰かに頼らずにできることがあります。」
先生は
「点字を必要とする人から点は消えることはない。 点は小さく白い光です。」 とおっしゃっていました。
最後に先生が作った「ありがとう(井上陽水・奥田民生)」の替え歌を一緒に楽しく歌いました。「ありがとう!ありがとう!感謝して〜♪フランス生まれの点字ありがとう!」
ユーモアたっぷりの明るく楽しい石川先生のお話に、みなさん引き込まれ、あっという間の1時間半でした。先生の気さくなお人柄のおかげで、講演後は、点字利用者・点訳者共に活発に感想や質問が出され、先生のおすすめの本を聞いたり、自分が点字を教えている経験について話したり、困っていることへのアドバイスを求めたり・・・幅広い内容でしたが、先生はそれらの一つ一つに丁寧に答えてくださいました。石川先生、本当にありがとうございました。
また、この講演を聞いて、点字を読むこと、打つこと、そして教えることに意欲が出てこられた方もいらっしゃったのではないでしょうか。参加してくださったみなさま、本当にありがとうございました。




◆ 編集後記 ◆

点字離れが進むと言われる昨今。 先生のお話を聞いて、点字を学ぶということはただ点字習得に留まることではなく、その方の可能性に問いかけているのではないかと思いました。「点字を使う」と決める意識の受け入れとそのための努力は、当事者でないとわからないことかもしれません。だからこそ、点字を読んでくださる方に寄り添える点訳者になりたいと思いました。

浅田浩子



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