N B N 通 信 38 号

名古屋点訳ネットワーク
2019年7月発行







―・― 目 次 ―・―





1.「第22回 名古屋点訳ネットワーク総会」のご報告

2.植村 要氏 講演会
「視覚障がい者の読書環境の変化 ― 全盲の場合を中心に」

3.「第65回全国盲女性研修大会ボランティア募集」のお知らせ

編 集 後 記






1.「第22回 名古屋点訳ネットワーク総会」のご報告



6月2日(日)、名古屋市総合社会福祉会館・多目的活動室(6階)において「第22回 名古屋点訳ネットワーク総会」を開きました。 名古屋市社会福祉協議会の野川様、若森様も含め30名の方が参加してくださいました。総会の内容は以下の通りです。

(1)2018年度活動報告
    2018年7月29日 総会 および 白川寿子氏講演会「CD用円形点字器開発について」
    2019年3月10日 『点訳のてびき第4版』勉強会

(2)NBN点訳データベース登録状況
    書籍 1406  新聞雑誌などの記事 3410  歌詞 2460 欠番あり

(3)2018年度会計報告:参加者に配布し、承認されました

(4)役員改選
    なし(2年任期のため)

(5)2019年度活動計画・予算
    例年通り役員に一任されました。
    なお、点訳勉強会を11月以降に計画しています。日時は未定です。

    活動計画についての意見を下記に箇条書きにします。

  ・NBNの活動に関して、参加したいとの声が多かったものは、点訳勉強会、視覚障がい者との交流会、他グループとの交流会などでした。
   他に、生活支援の勉強会をあげる方もいました。
  ・点字利用者から、点訳は視覚障がい者と直接会わなくてもできるが、交流の機会を持つことによって、利用者の事を知ってほしいという意見がありました。
  ・ボランティアは点訳・音訳という形で何かしらの交流になっているので利用者との交流を必ずしも持たなくてもよいという意見もありました。
      



2.植村 要氏 講演会 「視覚障がい者の読書環境の変化 ― 全盲の場合を中心に」

総会後、植村要氏に「視覚障がい者の読書環境の変化」という題目で講演をしていただきました。
講演会に来られなかった方のために、植村氏の紹介をさせていただきます。

植村要さん講演中 植村氏は1968年生まれ。スティーブンス・ジョンソン症候群のため中学生の時、岐阜県立岐阜盲学校に転校されました。
卒業後は病院のリハビリテーション科に勤務されましたが、高知システム開発から発売された「マイリード」の入手をきっかけに大学進学を決意され、34歳で花園大学へ入学、その後、立命館大学大学院へ進学され、博士課程まで修了なさいました。
現在「株式会社図書館総合研究所」で電子書籍及び電子図書館に関わるお仕事をされている傍ら 立命館大学人間科学研究所の客員研究員としてもご活躍されています。
植村氏は具体的なデータを示しながら、これからの点訳ボランティアの役割について、また、児童から中高年まで幅広い世代に渡って、視覚障がい者の可能性を広げるためには何が必要かをお話しくださいました。
 
植村氏の第一の提案は、点訳物を児童書に特化することです。
視覚に障がいを持つ年少者の学習には点字は必要なので児童書や副読本の点訳は必要です。

第二の提案は、電子書籍として市場で調達できるものに関しては点訳の必要はないということです。
というのも昨今の点訳・音訳ボランティアの高齢化並びに減少化により点訳・音訳データの作成量が減っていくことが予想されるからです。

第三の提案は、今後必要となってくるICT(パソコンやタブレット、インターネットなどの情報通信技術を使った教育手法)の講習です。
ご存知の通り学校でもデジタル教科書が認められるようになりました。もちろん植村氏は数学など点字が不可欠な授業があり、子供には点字も必要だとおっしゃっています。そのうえで、子どもや若者は点字が覚えられるが、高齢者は音訳のほうが便利なのではないか、ICT講習を受けてパソコンなどのスキルをあげたほうが視覚障がい者の世界が広がるのではないかと提案されました。
中高年の中途失明者にとっては点字を一から覚えるより、スクリーンリーダーなどから情報を得るほうが入手できる情報量が増え、しいては視覚障がい者の自由が増えることに繋がるからです。そのために現在、視覚障がい者にはインターネットなど情報通信技術を活用したICT教育が最も必要であることを力説されました。

第四の提案は点訳の工程におけるデジタル化です。限られた人材で活動するためにOCRを活用し自動点訳ソフトなどを使って作業をデジタル化し効率化してほしいとおっしゃいました。
実際にその場のボランティアグループにお聞きしたところ、OCRなどを使い自動点訳をしているグループもあればそうでないグループもありました。
講演後の質疑応答では点字表記の話題も上がり、点字使用者がパソコンやスマホなどで漢字かな交じり文を書くときの、助詞などの表記や漢字変換についての難しさについて話し合いました。最近は、視覚障がい者もパソコン・スマホなどを使い、点字以外で文章を打つ機会が増えているので、点字表記も一般に使われる文字に合わせて助詞も「へ」「は」を使ったほうがいいのではないかという意見もありました。

植村氏の講演はご自分の体験や具体的な話をもとにされていたので、今後の視覚障がい者がどうやって情報を得ていくのかという方向性をはっきり示していました。

そして私たち点訳者は、それを知ったうえで点訳をすることが必要だと実感しました。
点訳は視覚障がい者が情報を得るための手段であり、点訳者は必要な人に必要な点訳を届けなければなりません。
点字と電子書籍、この2つを使い分けて、容易に情報を得ることができる視覚障がい者がますます増える社会になることを期待します。





《NBN代表 中西和子よりボランティアのみなさまへ》

講演の10日後に植村さんから送っていただいた資料には、音訳ボランティアを高年齢で始める方が多いことが、平均年齢を上げている一要因であると書いてありました。資料を読みたい方はNBN役員までご連絡ください。

この論文を読んで、ボランティアがやめているために平均年齢が上がっているわけでは無いことがわかり私は安心しました。昔よりも健康年齢も上がり、高齢という言葉が似合わない、若々しい方が増えています。その人たちが新しく点訳や音訳を始めるとき、最新の道具を使うでしょう。前から点訳や音訳をしている人たちも、ITを使って効率的に活動していけば、人数の減少を補えると思いました。そして、直接 点訳や音訳をしなくても、そのパソコン相談に応じたりする、サポート者も重要と思いました。



3.「第65回全国盲女性研修大会ボランティア募集」のお知らせ

 名古屋市社協からのお知らせです。第65回全国盲女性研修大会が、8月28日(水)と8月29日(木)に行われます。
 場所は愛知県産業労働センター(ウインク愛知)とその周辺です。
 全国から多くの視覚障がい者やご家族、関係者が集まる大会で、そのボランティアを募集しています。
 詳しいことは名古屋市視覚障害者協会大会事務局までお問合せください。
 電話:080−1582−3362
 メール:joseikyotaikai-nagoya@meishikyoo.chu.jp






◆ 編集後記 ◆ 

今回は、NBNサポーターで点字利用者の牧原英治さんからの、点訳・音訳ボランティアへのメッセージをご紹介します。牧原さんは高校3年生の時全盲になり、点字を習得されました。現在は仕事、会議のメモ、趣味のカラオケなどに点字を使われているそうです。
「今後にどんなに素晴らしい音声機器が開発されようとも、生まれながらであろうと中途失明であろうと視覚障がい者に点字の習得は必須と考えます。ですから点訳ボランティアさんは絶対に必要です。
勿論、音訳ボランティアさんも絶対に必要です。だから視覚障がい者とのかかわりも含めて… どんな方法であれ、それぞれのボランティア活動を継続して下さいね!そして視覚障がい者の現状などをもっともっと社会に広めて下されば幸いに存じます!」
広報 浅田浩子






名古屋点訳ネットワーク 事務局

(名古屋市社会福祉協議会 ボランティアセンター内)


       〒462−8558 名古屋市北区清水4−17−1
       Tel 052−911−3180   
       Fax 052−913−8553  
      NBN ホームページ  http://www.n-braille.net/
       NBN E-MAIL: daihyo@n-braille.net