N B N 通 信 44 号

名古屋点訳ネットワーク
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E-MAIL: daihyo@n-braille.net
2022年11月発行





―・― 目 次 ―・―

1. 「第25回 名古屋点訳ネットワーク総会」のご報告

2. 「AIで変えていく点訳の未来」のご報告








1.「第25回 名古屋点訳ネットワーク総会」のご報告

         

6月19日(日)、名古屋市総合社会福祉会館・多目的活動室(6階)とオンライン(ZOOM)にて「第25回 名古屋点訳ネットワーク総会」を開きました。総会の内容は以下の通りです。

(1)2021年度活動報告
2021年7月4日(日) ZOOMで総会ならびに講師に長江まゆみさんを招いて点訳勉強会を行いました。

(2)NBN点訳データベース登録状況
2022年6月時点でのタイトル数は以下の通りです。
昨年より788タイトル増えました。ご協力ありがとうございます。

書籍 1808  新聞雑誌などの記事 3606  歌詞 3371
2022年5月にサーバーを引っ越ししております。

(3)2021年度会計報告
会計・会計監査の報告により承認されました。

(4)2022年度役員(役員任期満了のため改正)
代表     中西和子(大樹会)
副代表    細川陽一(名古屋盲学校)、花井敦子(はづき会)
会計     中井慶子(点訳サークルてんてん)
会計監査   大倉裕子(みなづき会)
広報     浅田浩子(点訳サークルてんてん)、大倉裕子(みなづき会)、竹本邦江(しろく会)
サポーター  牧原英治(半田市)、石川亜紗美(半田市)
HP管理    中島正二(瀬戸市)、平瀬徹(大樹会)

これまで、NBNの活動を支えてくださった、木全さん、平松さんが引退されました。長い間ありがとうございました。

(5)2022年度活動計画・予算
例年通り役員に一任されました。

     

「AIで変えていく点訳の未来」ご報告

講師 TAKAO AI株式会社
     代表取締役  板橋 竜太 氏
      CTO   藤巻 晴葵 氏
   東京工業高等専門学校 情報工学科 准教授 山下 晃宏 氏

講演中の画像 (1)「TAKAO AI」会社紹介

「TAKAO AI」は、板橋氏が東京工業高等専門学校在学中に、視覚障がい者からの依頼をきっかけに、自動点訳技術の事業化をしようと立ち上げた会社です。
まず板橋氏が会社の理想と現状、そして目指すものと課題についてお話しくださいました。
また点訳者が協力できることについて意見交換しました。
板橋氏の理想は、視覚障がい者が手に取ったものに、あらかじめ点訳データにアクセスできるシステムをつけておくことです。 そのシステムが、現物を提供する会社により「TAKAO AI」を通して一般化されることにより、視覚障がい者も当たり前に情報が得られるようになるとのことです。

 (2)TAKAO AIの理想と現状、課題

@提案する理想形・実現したいこと
家に届いたすぐに読みたい手紙などの個人的な書類、ポスター、学校の手紙、商品のラベルなど手に取ったものがすぐに読めるようにしたい。
A現状
  ・点訳を依頼しなければならない。ヘルパーさんに音読をお願いしなければわからない。
 ・はり紙は貼ってあるかどうかもわからないことがある。
 ・スマホの読み上げは不十分である。
B理想の情報伝達ができるために「TAKAO AI」が目指すもの
 ・情報を作る側が点字データが簡単に作れると、視覚障がい者が健常者と同じレベルで情報を得ることができる。
 ・情報を作る側(会社)が「TAKAO AI」へデータを送るとAIが点訳アプリで音声を読み上げ、点字データ(点字メモ)作成、点字印刷までできる。
 ・全自動で書類のテキスト化・点訳+閲覧ページを作成する。
C課題
 ・点訳の精度。
 ・PDFのテキストデータから抽出する場合の問題点。
 ・クラウドワーカーの仕事が減りAI点訳エンジンの仕事を増やすにはどうするか。
 ・レイアウトが複雑なものや、グラフや絵のあるものをどう点訳するか。
 ・プロの点訳者のアイデアが必要。点訳者のノウハウを生かし、将来は簡単に点訳できるようにしたい。
(3)実演
実際にデモサイトからポスターやちらしなどを使って、AIがどう点訳するかを見せていただき、下記のようなことがわかりました。
 ・ちらしは文字が大きいと見出しと認識する。
 ・画像が貼りついているものは難しい。
 ・パワーポイントを写真にしたものに関しては読み取りできる。

(4)参加者からの質問(以下、お名前は省略してQAの形で書かせていただきます。)
Q:テキストから点訳するのか。
A:AIが原稿をテキスト化するのがメイン。

Q:情報発信する側が対象なのか。
A:今はそうだが、将来は視覚障がい者も利用できるようになると思う。

Q:テキスト化において、たくさんの資料からレイアウトを検討する必要があると思うが。
A:様々なレイアウトを検証してどういうテキストが正解かを勉強する必要がある。

Q:マンションのはり紙などの具体的な情報提供についてはどうするか。
A:誰がアップロードしたものかを登録し、その人からの情報を受けたいという場合に情報を提供するつもりだ。

Q:今後のビジョンとして、何年後に実現可能なのか。
  A:不完全なままでも実証実験をして、実用化していき徐々に企業に浸透させていきたい。半年〜1年、実証経験の予定で、3年くらいで実用化できるようにしたい。 ハザードマップや薬のデータなどにも生かしたい。

Q:段落が次ページにまたがってしまう場合前のページに残ってしまう場合はどう点訳するのか。
A:続けて認識して点訳する。

Q:(視覚障がい者より)紙媒体の情報を、マイリードで読み取ったり、スマホでサリバンプラスや文字起こしのアプリも使っているが、AI点訳の特質は?
A:テキスト化は同じだが点字にまで自動化するのが目標。

Q:(視覚障がい者より)音声の方が、利便性があるのではないか。
A:テキスト化がよくなれば利便性が上がると思う。

Q:(視覚障がい者より)レシピ本などイラストの入っている本をしてほしい。
A:動作をテキストにするのはいいが、おいしそうなものをテキストにするのはむずかしい。

Q:(視覚障がい者より)個人的な財務関係に利用したい。
A:読み上げが使えない場面で利用できあるようにしたい。請求書などは、情報は多いのだが、シンプルなのでAIのニーズとなるところであろう。

Q:これまでのニーズは?
A:小学校のお知らせ、ちらしなどタイムリーでいて覚えていられない情報。

Q:現在も食料品を買うとき読み上げるものがあるが、具体的にどのようなものか。
A:QRコードやバーコードを読めば、商品とアレルゲンがわかるようにしているものがある。


(5)今後の課題
今後の現実的な課題と、私たち点訳者が協力できることは何か、また、AIで点訳を進めるにあたりAIのために治験を集める必要があるがそのデータを集めるためにどうするかについて、以下のご意見がありました。
 ・点字の基礎的なところは点訳者が直せる。
 ・図形・グラフなどいろいろな種類の点字データを集めることに協力できる
 ・テキストの中身の学習もできればより精度が上がる。
 ・例として1つのポスターを出し、何種類かに点訳するなど、プロジェクトに参加したい。
 ・正確な点訳より中身に特化したい。
 ・HPで要約を点訳するというのがいい。
 ・メーリングリストなどで登録し、点訳データについて共有するのはどうか。
 ・HPに点訳データとPDFをあげてデータを増やしていくのはどうか。

 *NBNとして「TAKAO AI」と情報交換するメーリングリストを立ち上げました。
  参加希望の方はNBNまでメールアドレスをお知らせください。

  

  

◆ 編集後記 ◆

  点字離れが言われて久しいのですが、こんなに若い世代の方が点訳に興味を持ちすべての物について、それを作って売る側が点字の情報をつけるということを一般化するのが理想という会社を立ち上げてくれました。これまでの、受け手が点訳を依頼するというのとは全く逆の発想です!真の平等、情報を知る権利、公共性・・・いろいろなことを考えた1日になりました。
様々な手段で情報を得ることができ、誰もが自分にあった方法を自由に選ぶことができる、そんな理想の社会に近づいているような気がします。
「TAKAO AI」のAIを育てるのは私たち点訳者のようです。どう育つか楽しみですね。

浅田浩子





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