NBN通信9号ー4

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視覚障害の理解のために

                         平瀬 徹

 私は高校2年から点訳ボランティア活動のお手伝いをさせていただいています。

 私が活動に参加させていただくようになってから「平瀬が来る日はボランティアの出席率がいいけれど、来ない日は少ない」と言われるようになりました。おそらく、点訳活動は他の障害者に対するボランティア活動に比べて、当事者に接する機会が少ないと思います。社協で活動するサークルは地域とのつながりもあり、利用者と交流する機会を作ろうと思えばできますが、図書館の蔵書を製作するボランティアはまずその機会がありません。プライベートな点訳依頼も、個人のプライバシーを保護するため、図書館職員を介すことになり、よっぽどのことがない限りボランティアと利用者が直接会って話す機会は少ないと思います。

 一方、手話や車いすダンスのサークル、知的障害者の日曜学校などの活動は、直接障害者と接することで成り立ちます。

 ボランティアする人としても、障害者と接したいと思うニーズが多いので、私が出席する日とできない日とで参加者数が変わるのだと思います。最近は月一回の大樹会の活動にもなかなか顔を出せなくてこご迷惑をおかけしていますが。後継者を作ればいいのでしょうが、それもなかなかうまく行きません。

私はもう33年ほど点訳ボランティア活動に関わっています。こんなに長くボランティアの方々と接してきているのに、昨年の大樹会の総会で「視覚障害者の方に聞きたいことはあっても、聞いては失礼なんじゃないか、傷つけてしまうのではと思い躊躇してしまうことがある」と言われてしまいました。

 私は鍼灸を業としていますので、患者さんから障害について尋ねられることがあります。そんなとき、「失礼なことを聞くようだけど」と前置きされることが最も不愉快です。「失礼なことと思うなら聞くなよな」と言いたくなります。

 そんなこともあって、大樹会で発行しているミニコミ誌「ハロー」と私のホームページで質問を募集し、それにお答えする「視覚障害者に何でもQ!」という企画を打ち出しました。視覚障害者といっても、失明した時期や見え方、生活環境によってさまざまなので、私一人がすべての視覚障害者の気持ちを代弁することはできません。そこで、同じ障害を持つ仲間やホームページを訪れて下さる方々にも協力していただいています。

 一方、昨年4月から、障害者に対する福祉サービスも介護保険と同じように民間事業者が参入できる「支援費制度」が始まり、ガイドヘルパーの資格を取得する講座がたくさん行われるようになりました。それまではボランティアをなさっていて「もっとお役に立ちたい」という方々がホームヘルパーやガイドヘルパーの勉強をなさって派遣されていたのですが、今はビジネスとしてとらえる方々が増えています。とくにホームヘルパー2級以上の資格をお持ちの方は、三日間の講義と一日の施設実習で、視覚障害者と車いす使用者の両方のガイドヘルパーの資格を取得できてしまう短縮カリキュラムがあります。

 「平瀬さんは朝起きてから夜眠るまでに、家の中でどんなことに困りますか?」と、ガイドヘルパー講座の講師をしてらっしゃる社会福祉士の方々から尋ねられることがあります。「私たちは馴れたところでは不自由はないんですよ。盲学校の中で中途失明の人もスイスイ白杖なしで歩いていますよ。」と申し上げてもなかなか信じていただけません。家の中でも白杖が必要だと思ってらっしゃる方々が講師をしてらっしゃるのです。

 ホームヘルプを先に勉強なさった受講生や講師の方々ですから、障害者に対しても高齢者の介護をするように、腫れ物にでも触るように、ただ安全に怪我をさせないようにという意識が強いのかもしれません。そのような誤解を持ったまま事業所に配属され、派遣されるヘルパーがいるのです。

 私たちは健康なのですから、抱きかかえられるようにして運ばれるのではなく、一緒に歩きたい、景色の説明もしてほしいのです。

 NBNの点訳ボランティアの皆さんはこのような誤解はないと思いますが、現状を鑑みますと、私たちはただ点訳活動をしているだけでなく、社会に対し、障害者に対する意識を払拭させるような活動もして行かなければならないと思うように、ガイドヘルパー講座の講師をさせていただく中で感じるようになりました。

 NBNの勉強会で漢点字を紹介したところ、問い合わせをたくさん頂くようになりました。中途失明者にとって漢点字は、今まで使っていた文字を取り戻せるのですから、生き甲斐を持っていただくためにもとても有効だと思います。しかし、中途失明者のリハビリに関わる方々の意識が「いたれりつくせりしてあげれば本人は満足だろう」というエゴで固まっていては、漢点字をお勧めするところまで持って行くことはできないと思うのです。

 私や鈴木さんは決して特別な存在ではありません。皆さんに目をお貸しいただくことで、ともに活動することができます。視覚障害者の文化向上のため今まで活動してまいりましたが、もう一歩進めて、社会への意識改革の活動もしませんか!

 最後になりましたが、「視覚障害者に何でもQ!」

http://www.yoihari.com/nandemoq/

に対し、皆様からもご意見・ご感想ご質問などの投稿をいただければ幸いです。

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